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注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは?

ADHDの特徴(多動・衝動性、不注意)、注目されている実行機能や報酬系の障害、併存症について簡単に述べます。

1)多動
 多動には、授業中なのに勝手に席を立つ、立ち歩いて教室外に出て行くなどの「移動性多動」と、席には座っていても、常にもじもじ・そわそわしている、手遊びをしているなどの「非移動性多動」とがあります。アメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-IV)の診断基準には、「しゃべりすぎる」も多動性に含まれています。しゃべりだすと機関銃のようにまくしたてる、話す声が大きい、話の内容がころころ変わるなどをよく認めます。遊びや余暇活動で、興味があることには、夢中になりすぎる半面、することがなくなる、興味がなくなると立ち歩いてしまいます。

2)衝動性
 考えないで反応してしまう、あるいは、行動を抑えることができないことです。その行動をしたらどのような結果になるかを考えずに行動してしまいます。DSM-IVの診断基準では、順番を待てない、質問が終わる前に出し抜けに答えてしまうが挙げられています。指名されていないのに勝手にしゃべる、最後まで聞かず、話に割りこむ、一番になりたい、あるいは待てないのでルールを無視する、人が持っている物が気になると触らないと気がすまない、人のことを考えず、大きな声で主張する、自分が最初にやろうとするなどの症状がよく認められます。

3)不注意
 多動性・衝動性は、学校で気づきやすい症状ですが、「不注意」の症状は多岐に渡り、多動・衝動性がほとんどない不注意優勢タイプのADHD児は、他人とのトラブルは少ないため、教室の中で気づいてもらえないことも多いのです。この不注意の問題を支援者が理解できるかがADHD理解のポイントと言えます。ADHD児の不注意は、何に対しても注意集中できないというものではなく、子どもの関心が高い特定のものに対してはむしろ過集中してしまうという特徴もあります。定型発達児では、年齢が上がると、自分の苦手なことや嫌だなと思うことでも、がまんして集中してやりとげようとしますが、ADHD児では、なかなかできません。


4)実行機能障害、報酬系障害としてのADHD
 エール大学の心理学者トーマス・ブラウン博士は、脳のマネージメントシステムである「実行機能」がうまく働いていないと考えるとADHDをもつ子どもや成人の症状が理解しやすいと述べています。「実行機能」は、よくオーケストラの指揮者にたとえられます。演奏者一人一人は優秀なのに、指揮者がまずいと良い演奏はできません。ADHDの子どもたちは、能力は持っているのに、適切な時に適切な方法で能力を発揮できないという問題があります。
 「実行機能」には、物事を順序だてて行う・課題に優先順位をつける(計画が立てられない、急ぐべき課題をまずやって、急がない課題を後回しにするといったことができにくい、課題の手順がわからないなど)、すぐに課題にとりかかること、前述の注意に関する様々な問題、覚醒レベルの調節、努力し続けること、処理スピードを調整すること(急がないと間に合わないときはスピードアップする、間違いを減らすためにスローダウンする)、感情のコントロール、ワーキングメモリーの問題などが含まれています。ワーキングメモリーとは、例えば一つの情報を保持しながら何か別の活動をするといった機能です。例えば、2階に物を取りに行く場合、2階に移動するまで何を取りに行くのかを脳の中に保持しておくことです。ワーキングメモリーに問題があると、言語理解や表現、人とのコミュニケーションにも影響を与えます。また、読みや読解、算数にもワーキングメモリーの問題が重要な影響を与えます。

 ADHDの子どもは、充分な睡眠をとっていても、授業中によく眠くなる、あくびを頻繁にすることをよく経験します。読み書きの途中に興味がないと眠り込んでしまうこともあります。朝の身支度や課題をなかなかしようとしない、急がないといけないのに、だらだらとゆっくりのスピードしかできない、ついさっき注意されたことを忘れてしまって、同じ注意を受けるといった問題点を日常的に抱えています。「この子は、毎日毎日同じことを言われているのに、わからないのです。しようとしないのです。どうしてでしょうか。」という教師や母親の悩みをよく聞きます。
 感情のコントロールの問題は、DSM-IVの診断基準には入っていませんが、ブラウン博士はADHD児の特徴として強調されています。欲求不満の閾値が低く、感情を抑えることが苦手で、感情を爆発させやすい。筆者の経験からも、この感情コントロールの問題、特になんともいえないイライラ感やできない時、できそうにない時の耐性のなさは、ADHDの子どもを理解する上で重要なポイントと考えています。
 最近では、ADHDに報酬系の障害があることも脳機能画像等で証明されています。報酬系の障害が生じると、報酬強化が十分に行えないため、たとえ大きな報酬であっても待てません。その結果、待つことを最小限にするために衝動的に代替の報酬を選択するパターン(衝動性)と、その報酬を待つための時間に、注意を他のものにそらす、あるいは気をまぎらわすための代償行動をとるパターン(不注意や多動性)として現れます。


5)併存症
 ADHDをもつ子どもは、併存症をよく伴います。反抗挑戦性障害や行為障害、学習障害や運動不器用(発達性協調運動障害)、チック障害や夜尿症、昼間遺尿症などの排泄障害、睡眠障害、気分障害や不安障害などの情緒障害などが併存しやすいことがわかっています。なかでも、反抗挑戦性障害は、ADHDをもつ子どもの約30%に認められます。また、学習障害、特に読み書き障害も約20%から50%に認められるとされています。行動の問題だけに注目するのではなく、常に併存症の有無、対応も同時に考えていかなければいけません。広汎性発達障害とADHDの併存は、議論があるところですが、臨床の場では、両者の特徴をもつ子どもをよく経験しますので、併存がありえると考えたが良いでしょう。

kurume STP 2008